屍都市
「なぁ、お前は…」

「お前じゃないよ、雄大」

「お!かっこいい名前だな」

「えへへ…」

他愛ないやり取りを続ける秀一と雄大。

秀一は、この子が同じく逃避行を続ける純の息子であるとは知らない。

「雄大は何で動物園に来たんだ?」

「んとね…」

ヒーローの人形を見つめながら、少し俯き加減に雄大は呟く。

「マ…お母さん、こないだの日曜日に動物園連れてってくれるって言ってたけど、お仕事で行けなくなったんだ…だからもしかしたら、お母さん動物園に来たら待っててくれるかなって…」

「そうか…」

雄大の頭をクシャクシャと撫でて、秀一は歯噛みする。

守ってやりたい。

この子も、この子の母親も…。

理不尽な暴虐から、勇気あるこの子の全てを救ってやりたかった。

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