屍都市
保健室について、理子は丸椅子に腰掛ける。

「ちょっと待っててね…包帯と湿布と…テーピングの方がいいかしら」

棚の中を探りながら、幸羽が呟く。

理子のローファーとソックスを脱がし、手早く手当てする幸羽。

テーピングで患部を固定する。

「凄いですね…もう踏ん張っても痛くない…保健室の先生よりずっと上手」

「これでも看護師ですから」

理子の言葉に幸羽は微笑む。

「でも無理しないでね。あくまで固定してるだけだから。またテーピングが緩んだら言って?いつでも手当てしてあげる」

幸羽はこんな状況下でも笑顔を絶やす事なく、理子に語りかけた。

その笑顔が、理子の不安を少しずつ取り除いてくれる。

「私の勤めていた病院に、精神科の小野寺先生って人がいてね。笑顔を見せてあげるだけで、患者さんは安心するんだよって教えて下さったの」

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