屍都市
一ヶ月前。

華鈴がよく語って聞かせてくれた、陰島に渡った男女が亡者に襲われたという都市伝説の時期とも符合する。

半分しか生存しなかったという男女。

「その被害者の一人に、もしかしたら小野寺のおじさんも…？」

「………」

言いにくそうに。

しかし遺族である理子には、確かな真実を伝えなければならない。

「私がこの目で確認した訳じゃないから、絶対とは言い切れない…だけど小野寺先生は、陰島に行くと言い残したのを最後に、消息不明になったの…恐らくは…」

声を詰まらせながら、幸羽は理子に語って聞かせる。

…顔を伏せ、腕時計を抱き締めるように。

理子は声なき声で嗚咽した。

優しかった小野寺のおじさん。

会う度に笑顔だった小野寺のおじさん。

親と喧嘩した時も、進路で迷っていた時も、小野寺のおじさんだけは、いつでも私の味方でいてくれた。

そのおじさんが、陰島で…今の私と同じようにゾンビ達から逃げまどいながら…恐らくは命を落としたのだ。

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