屍都市
「理子ちゃん」

幸羽が彼女の肩を抱く。

「駄目よ、泣いたら…小野寺先生は、笑顔でいる事が希望を与えるっていつも仰ってたわ…それは他人にだけじゃない。自分自身にも言える事なのよ?」

今の理子に笑えという事は、あまりにも酷な事かもしれない。

それを重々承知した上で、幸羽は言う。

「行こう、理子ちゃん。小野寺先生だって、ここで貴女が立ち止まる事を望んだりはしないわ」

「……………そうですよね」

まだ涙に濡れた瞳で、理子は顔を上げる。

彼女には使命ができた。

大好きだった小野寺の遺志を継いで生き延びる事。

それが理子に課せられた何よりも大切な使命…。

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