屍都市
ようやく一縷の望みを見つけたという油断。

それが彼の注意力を散漫にさせる。

そしてそれが悲劇へと繋がった。

「…?」

梯子を昇ろうとした聡の耳に、何かが這い回る音が聞こえる。

小さな、無数の何か。

下水が流れる音とも、ゾンビが這いずる足音とも違う。

が、薄暗い中ではそれが何なのか確認できない。

「…何だ?」

煙草を一本口に咥えるついでに、聡はライターの火で周囲を照らす。

そこにいたのは。

「!?!?!?!?」

彼の足元を埋め尽くすほどの、何百何千という鼠の大群だった。

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