屍都市
「ぐぁッ!…がぁっ…!」

全身に纏わりつく鼠を何とか払い落とそうとするものの、とにかく数が多すぎる。

体中に噛みつかれ、その激痛に聡は悶絶する。

激痛も勿論だが、ゾンビ化した生物に噛まれたという事はもっと致命的な事があった。

傷口から、寄生虫に侵入されてしまう…!

(くそ…くそっ!くそっ!くそっ!)

それでも聡は自分の命が危うい事よりも、別の事に囚われていた。

(もう少しで脱出口に手が届いたのに…!)

鼠達に全身を齧られる苦しみの中、聡は光が差し込むマンホールを見上げる。

(もう少しで…秀一さん…あんたの背中に手が届いたのに…!)

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