屍都市
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

殴っても殴っても、お互い一歩も退かず。

聡と心花は顔中腫らして片膝をついている。

聡は口元から血を流し、心花は目尻を切って出血していた。

「お前…はぁっ…普通女をここまで殴るかぁ?」

呼吸を乱しながら悪態をつく心花。

「うるせぇ…俺をここまでボコボコにしといて…はぁっ、はぁっ…女ぶってんじゃねぇよ」

聡は心花の女らしからぬ喧嘩の強さに、内心感服していた。

いい女だし、腕っぷしも強い。

こいつはそのうち、美原市で名を売るようになるだろう。

「神威心花だったか?…てめぇ覚えとけよ」

ヨロヨロと立ち上がる聡。

「そのうち絶対決着つけてやっからな…」

「面白ぇ」

ニッと笑って、心花も立ち上がる。

「返り討ちにしてやるよ…」

互いに相手を飽きるほど殴っておきながら、不思議と恨みはなかった。

思えばこの頃からだった。

聡と心花に奇妙な友情が芽生えたのは…。

< 158 / 241 >

この作品をシェア

pagetop