屍都市
木の幹に隠れ、背中越しに公園内を注意深く観察する。

…やはりここもゾンビが徘徊する危険地帯と化していた。

手入れの行き届いた芝生の広場を、血で汚れた着衣のまま行き交う屍達。

平和な公園に似つかわしくない光景に、華鈴は自分が今も夢でも見ているのではないかと錯覚する。

学校帰りに理子とここに立ち寄って、二人で買い食いしながら暗くなるまでお喋りしていた事を思い出す。

あの公園と同一の場所だとは、今もって信じられなかった。

昨日までの…いや、今朝までの日常はもう存在しない。

華鈴達の美原市は、異空間とも言える非日常に姿を変えてしまったのだ。

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