屍都市
(取り戻すんだから…私達の街を!)

華鈴はゾンビ達に見つからないよう、木の陰から木の陰へと小走りに移動していく。

幸運にも潮風は華鈴に向かって吹き付けている。

彼女は風下の位置。

人間の体温や体臭によって位置を特定する事もあるゾンビ達は、華鈴が公園内にいる事に全く気づいていない。

潜入工作員よろしく、素早く足音を立てず。

華鈴は公園の奥へ、奥へと進んでいく。

(えと…)

茂みに身を潜め、取材ノートをパラパラと捲る。

死体が上がったとされるのは、公園の一番海に近い位置。

瀬戸内海を一望できるベンチの並ぶ場所。

波打ち際に、死体が打ち上げられていたのだという。

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