屍都市
彼女に出来うる限りの全速力で。

呼吸を乱しながら、華鈴は一気にベンチのところまで全力疾走!

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

海への転落防止用の手摺りにぶつかるように、彼女は駆け込んだ。

(ここ…ここが死体が上がったっていう場所…)

乱れた呼吸もそのままに、華鈴は手摺り越しに海を覗き込む。

街はこれ程までに大混乱になっているというのに、海は今日も穏やかに寄せては返している。

その事がどこかアンバランスなようにも思えた。

目を凝らし、注意深く波打ち際を見る華鈴。

その瞳に。

「!」

あるものが飛び込んできた。

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