屍都市
取材ノートに書き留める事に気をとられて、ゾンビ達に接近を許してしまった。

そもそも気配のないゾンビ達だ。

相当近くに接近されるまで、その存在に気づくのは難しいのだ。

「くっ!」

額に汗を浮かべ、華鈴は素早く退路を探す。

何とか見つけた僅かな隙間を縫って、身を低くして走り抜ける!

(死ねない…!)

手帳をしっかりとポケットの上から押さえ、華鈴は走る。

(絶対に死ねない!)

ようやく事実を掴んだのだ。

この街が好きだ。

理子との沢山の思い出が詰まったこの街が好きだ。

そんな美原市をこんな酷い事にされて…。

黙って死んでなんかやるもんか!

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