屍都市
その時だった。

「…?」

駅の構内で声が聞こえたような気がした。

ゾンビの唸り声とは違う。

もっと甲高い声。

「…!」

まただ。

今度ははっきりと聞こえた。

子供の声のような気がしたが。

山田は売店の陰から僅かに顔を覗かせる。

「助けてぇえぇっ!」

幼い子供が、無数のゾンビの群れに追われている。

運悪くこの駅に迷い込んでしまった子供。

その子が純の息子であり、秀一に逃げるように促されてここにやってきた雄大である事を、山田は知らない。

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