屍都市
だというのに。

「おじさんありがとう」

頼もしい父親に縋るように。

雄大は嬉しそうに山田の手にしがみついた。

「助けてくれたんだよね、かっこよかったよ」

「え…」

まだ呼吸も整わないまま、山田は雄大の顔を見る。

「お、大人をからかっちゃいけないよ坊や…おじさんのどこがかっこよかったんだい…」

チラリと、雄大が特撮ヒーローの人形を握っているのが目に入った。

彼のような子供がカッコいいと思うのは、このヒーローのように強くて見栄えのするアクションを見せる者だろう。

先程の山田は、見栄えのするアクションとは程遠かった筈だ。

しかし。

「かっこよかったよぉ」

雄大は尚もしがみつく。

「だって、おじさん怖いのに僕を助けてくれたじゃん」

< 192 / 241 >

この作品をシェア

pagetop