屍都市
子供というのは、時に大人以上に本質を見抜くのに長けている事がある。

ゾンビに脅え、恐怖し、震え。

雄大は、山田がどれだけ臆病なのかを本能的に察していた。

だからと言って彼を嘲笑ったりはしない。

不器用で要領の悪い救出劇を見せられても、彼を無様だとは思わない。

その裏にあるものを、雄大はしっかりと見ていた。

『勇気』

雄大自身が脅えて逃げ出すしかない相手に対し、山田は身を呈して助けに来たのだ。

その『勇気』に対し、雄大は彼自身の知る最大級の賛辞、『かっこいい』という言葉で賞賛したのだ。

「はは…」

思わず顔をほころばせる山田。

(そうか…僕みたいなのがカッコいいか…)

こそばゆいような気分。

しかしその賛辞が、山田の胸に小さな火を灯していた。

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