屍都市
散々体を階段にぶつけ、あちこちに青痣を作って。

「いっ…たたたた…」

山田はゆっくりと身を起こす。

「だ、大丈夫かい坊や…」

「う、うん…」

雄大も小さく頷く。

…息を飲み、山田は地下鉄のホームを慎重に見回す。

静寂に包まれたホーム。

駅構内のゾンビ達の呻き声が、どこか遠くのものに聞こえる。

嘘のように静まり返った世界。

そこに、あの亡者達の姿は一体も見当たらなかった。

「や…やった…」

まだ完全に安全とはいかないかもしれない。

だが山田が、遂にこの地獄の街から脱出する、一縷の希望を見い出す。

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