屍都市
幸羽は声を詰まらせる。

「私も天野さんを犠牲にして、のうのうと生き延びたの。天野さんを踏み台にして、私はここまで生き永らえてるの」

「!!」

(天野…あのホストが、小野さんを庇って死んだの…?)

ここに来て初めて知らされる事実に、理子は愕然とする。

そんな事があったにもかかわらず、幸羽は弱音一つ吐かずに理子をサポートしていたのか。

「さぁ、どうするの?」

強い意思を秘めた眼差しで、幸羽が理子を見つめる。

その眼差しの前に、甘えた事は言っていられなかった。

強く、足を踏み出す。

「駅でしたよね…急ぎましょう、小野さん」

「ええ!」

理子と幸羽、二人は駅への道程を走った。

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