屍都市
ホームのベンチに座り、俯き加減に呟く雄大。

「マ…お母さんはとっても強いお母さんなんだけど…外にはいっぱいお化けいるから…大丈夫かなぁ…」

命が助かったから終わりではない。

この幼く小さな体で、雄大もまた不安と戦っているのだ。

彼が不安でいるのに、山田が先に泣き言を言う訳にはいかない。

身近な大人の不安というものは、子供には数倍数十倍の不安となって伝わるものだ。

両親が目の前で喧嘩していると、世界の終わりが来るのではないかというほどの恐怖に駆られた。

幼い頃の経験から、山田はそういった事を知っていた。

「あっはっはっはっはっ!」

わざと大きな声を出して、山田は雄大の前で笑って見せた。

「坊やがこんなに強い子なのに、その坊やのお母さんがこの程度の事で負ける訳ないじゃないか。大丈夫、今に坊やのお母さんもここに来るよ」

何の確証もない気休め。

しかし山田は雄大を精一杯励ます。

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