屍都市
だが、この場にいる全員がそういった修羅場に身を置いた訳ではない。

殆どが、殺し合いや虐殺の現場とは無縁の一般市民なのだ。

それ故に秀一は責任感を持つ。

何の戦闘経験もない彼らを無事にゾンビの群れから守るのは、自分の役目だと考えたのだ。

「ここから先は、俺の指示に従って行動してもらいたい。ここにいる全員で行動して、協力しながら街を出よう」

あの島での生死を懸けたサバイバルを経験した彼にとっては、当然とも言える提案。

しかし。

「おいおい、何であんたがリーダー気取りなんだ?」

聡が口を挟んだ。

「生き残りか何だか知らんが、俺はあんたの指図を受ける気はないぜ?こう見えても、俺は腕っぷしには自信があるんでね」

「…ゾンビの相手は只の喧嘩とは違う。下手するとミイラ取りがミイラになる可能性だって有るんだぞ?」

「…そりゃ俺が殺られるって事か?」

秀一の言葉に苛立ち、彼のネクタイを掴む聡。

「止せよ聡、リーマン相手にムキになんな」

心花が聡を制した。

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