屍都市
天野は両手をポケットに突っ込み、秀一に背を向ける。

「お前がゾンビの事どれだけ詳しいか知らないが、俺はホストとしてこの美原の街を隅々まで知り尽くしてるんだ。調子に乗ってんなよ?お前の手なんか借りなくても生き残ってやらぁ」

捨て台詞を残し、彼は公園を去っていった。

…全員を見送り、秀一は唯一人公園に残る。

「っ…」

膝が震えていた。

怖くない筈がない。

今でも陰島での事を思い出し、夜中に魘されて目が覚める事もあるのだ。

だが今この状況は夢ではない。

覚めない悪夢。

ゾンビ達に捕まっても、都合よく夢から目覚めたりはしない。

だが、唯一あの地獄から生還した者として。

「…よし」

警棒を握り締め、秀一は歩き出す。

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