屍都市
見慣れた、しかし変わり果てた美原の繁華街ともオサラバだ。

脇目も振らずに走り抜ける天野。

その時だった。

「きゃあぁあぁっ!」

亡者達の巣窟と化した繁華街に似つかわしくない悲鳴に、彼は一瞬立ち止まる。

数え切れないほどのゾンビの集団。

ノソノソと摺り足で蠢く腐乱死体の群れ。

その群れに混じって、うろたえながら逃げ場を求める女の姿が見えた。

あれは…。

女の顔は一度見たら忘れない。

天野は彼女の事をすぐに思い出した。

さっき公園で連絡先を交換した連中の一人だ。

確か名前は…小野幸羽だったか?

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