屍都市
走っては退路を塞がれて、また走っては行く手を阻まれて。

幸羽の逃げ方は、はっきり言って要領が悪かった。

相手はゾンビなのだ。

気にせずもっと思い切り体当たりでも何でもして、押し退けてやればいいものを。

気が弱いのかゾンビ相手でも気遣っているのか、目の前に立ちはだかられる度にオロオロと立ち止まり、視線を泳がせて逃げ場を求める。

見ていてイライラするような動きだ。

「……」

ありゃあ駄目だな。

あの女、遅かれ早かれゾンビの餌食になる。

そのうち大群に組み敷かれ、地面にねじ伏せられて、全身に噛み付かれて終わりだ。

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