屍都市
チャラチャラして、女と金にしか興味がなくて、面倒な事、しんどい事からは常に逃げ回る。

華鈴や心花、理子や純が軽蔑の眼差しを送っていたホストとはまったくの別人となった天野がそこにはいた。

幸羽を逃がす為、体を張ってゾンビの群れに自ら飛び込む勇敢な男。

それが今の天野司だった。

一頻りゾンビ達を蹴散らした上で。

「何やってる!」

天野は幸羽のそばに立つ。

「早く逃げろ!ここは俺が食い止めてやっから!」

「いえっ…」

「俺は俺で何とか逃げるから!お前は気にせず逃げればいいんだって!」

「そうじゃなくて…」

「何だよ!」

幸羽の顔を見る天野。

幸羽は彼の右手を指差す。

そこには。

「……!」

右手の甲、皮下を『何か』が蠢いていた。

< 56 / 241 >

この作品をシェア

pagetop