屍都市
純の視線の先…歩道の片隅で、一組の男女が揉めていた。

といっても一方的な展開だ。

黒髪の制服姿の女子高生が、茶髪の如何にもな不良男子の胸ぐらを掴んで壁に押し付けている。

「何て言ったんだてめぇ…よく聞こえなかったんだ、もう一回聞かせてくれるか?」

薄笑みを浮かべて…しかし男ですら怯むほどの凄みを見せ付け、その女子高生、神威 心花(かむい みはな)は言う。

「『何が彼岸花だ』…とかぬかしたか?さっき…」

「いや、そのっ」

心花に顔を近づけられて、不良男子の顔面が蒼白となる。

普通彼女ほどの清楚な顔立ちの女子高生に顔を近づけられれば赤面する筈だが、彼にそんな余裕はない。

その清楚な姿とは裏腹の、気性の荒い一面。

美しい花でありながら毒を持つ性質とかけて、心花は誰ともなく『彼岸花』と渾名されていた。

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