屍都市
酷い有り様だ。

心花と聡は共に脱出口を探しながら、その惨状を見つめる。

拳銃を持った警察官ですら飲み込まれてしまう亡者の群れ。

あんなもの、どうやって止めるというのか。

心花の性格上、敵に背を向けるなどというのは屈辱にしか感じない。

どんなに数の上で不利でも、敵に後ろを見せた事がないのが彼女の誇りだった。

「馬鹿な事考えんなよ、心花」

歯噛みする彼女の横で、聡が言う。

彼は短くなった煙草を口からペッと吐き出して、チラリと己の背後を見る。

「まともにやって勝てる相手じゃねぇ。こりゃあお前が普段やってるタイマンとは訳が違うんだ」

「わかってるよ!」

苛立ち紛れに言葉を返す。

悔しかった。

何で私達が逃げなきゃならない?

ここは私達の街だぞ?

自分達の縄張りから、何でケツまくって逃げなきゃならないんだ?

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