屍都市

心花はその渾名と喧嘩の強さ、そして面倒見のよさを慕って集まってきた同年代の仲間を集め、暴走族を結成していた。

結成したといっても勝手に祭り上げられたようなものだが。

チーム名は『曼珠沙華』。

心花の渾名『彼岸花』の別名からとられたものだった。

「はっきりしろよ、男だろうがてめぇ…！」

不良男子の胸ぐらを掴んだまま、空いたもう片方の手を握り拳にする心花。

その手を。

「やめとけ」

一人の青年が掴んだ。

「あぁ？」

振り向く心花。

掴んだのは眼鏡をかけた青年。

黒の短髪、温厚そうな外見。

しかし見る者が見ればわかる。

眼鏡の奥の鋭い眼光、両手の拳ダコ。

昔、相当喧嘩で鳴らしたクチだった。