オール・アバウトなっちゃん
「だからお前達を守ってやると申しておるのだ」

と言ったところで誰も何も解りゃしない。

「論より証拠…今から何が起こるか教えてやる」

と言って三度笠のあごひもを完全に外して右手に持ち

「どこに隠れても無駄だ。私の目を欺く事など出来やしない…」

誰とも知れぬ相手が潜んでいるであろう川面に話し掛ける。

私の危機感迫る表情に、いつしか文句たらたらだった大学生達も言葉を失う。

静かに舟が進み魚が飛び跳ねた時

「そこだ!」

手に持った三度笠を水平に投げ放った。

"ザシャッ!"

何かを切り裂く音とともに三度笠は川面に吸い込まれた。
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