とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
思わぬ足止めを喰らい時間を大幅にロスしてしまった。
迷わず正門ではなく裏門から出る。
ちゃんと鍵が開いている事にホッとしながら駆け出した。
朝来た道を走る。
心地良い風を受けて神社の前で立ち止まって空を仰いだ。
そういえばここの神社だっけ…俺が居たのって…
もう小さい時の事だからはっきりとは覚えていないが、俺はここに1人ポツンと立って居た所を道場の師範に拾われた。
記憶をなくしていた為、名前も歳も分からなかった。
この容姿なので師範は日本人じゃないかもしれないと言った。
ふと視線を戻した時奇妙な事に気付いた。
「…風が…」
自分の周りだけ風が舞っている…?
奇妙だが全然怖いとかそういう気にはならなかった。
むしろ安心して気持ちが落ち着く。
まるでそれが当たり前のような…
「この神社って昔天狗が住んでたって言ってたっけ…」
育ての親である師範が、お前は天狗の子かもしれない…と真顔で言っていたのを思い出して笑えた。
「クスクス…天狗って…
あ!!ヤバい時間が!!」
慌ててまた走り出し、道場へと急いだ。