とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


時刻は10時半を過ぎたところだった。

ガクは「アシを借りてくる」と言って店の中に居たゴウのところに行ってしまった。


「俺、右京のバイクがいい~」

「何言ってんのよ!
右京のバイクには私が乗るの!

虎太郎くんはガクさんと乗りなさいよ!」


俺の取り合いになり忍と虎太郎が揉め出した。


「お前らなぁ…」


俺は二人を見て溜め息を付いた。

キャンキャン騒ぐ忍をヒョイと肩に担いで歩き出す。


「忍は俺の後ろに決まってんだろ!

虎太郎はガクとな~」

「えぇ~~…」


虎太郎は肩を落としたところをニヤニヤするガクにガシッと掴まれた。


「虎太郎~

可愛がってやるから俺で我慢しろや…」


そう言うとガクは豪快に笑いながら叫ぶ虎太郎を同じように肩に担いだ。




閑静な住宅街に入ると近くの公園にバイクを停車させた。

カルト集団の集まる屋敷の付近まで歩き少し離れた所で様子を伺う。



「んじゃまず俺がカルト集団の気を引きつけるから、右京達は地下へ。

被害者がどこに監禁されてるか分からないから、ガクさん頑張って探してよ?」

「…わかんねーのかよ…」


不満そうなガクは諦めたように「りょーかい」と吐き出した。



玄関付近で一呼吸ついてそっとドアノブを捻った。
鍵がかかってなくて助かった。


音を立てないようにそっと開くと俺と虎太郎が身を少し低くして屋内に侵入する。

虎太郎に「先に行け」と指で指示すると頷いた。

振り返って入口のガクに向けて「待て」と手の平を見せた。

虎太郎は人の気配を感じたのか、ピタリと動きを止めて俺を見ると「手前の部屋に入る」とジェスチャーした。

俺はガクと忍を呼ぶと素早く近寄って来た。

虎太郎が手前の部屋に入るのを確認すると、俺達は奥にある地下へ続く階段をゆっくり下りた。




< 116 / 405 >

この作品をシェア

pagetop