とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


地下に下りると幾つか似たような扉が並んでいたが、ひとつだけ装飾が施された両開きのものがあった。

俺はガクと忍に自分がその扉に行くと指差すと、ガクは頷いて廊下を逆方向に移動した。


ふいに腕を引っ張られ振り向くと俺の唇に忍がキスをして「加護を…」と呟いた。


ほんの一瞬の出来事で反応する間もなく、ガクの方へ向かう後ろ姿に「ありがとう」と笑みを零し扉に手をかけた。



軋んだ音を立て重みのある扉を開き体を滑り込ませた。


至る所に揺らめく蝋燭の光…

壁には所狭しと本が積まれていた。

ゆっくり視線を動かし部屋を見回す。


…何か居る…


気配は感じるが目には見えない。


『よく見ろ。
向こうはこっちに気付いている。』


…居た!!


隅の暗闇からこちらをじっと見据える金色の瞳が見えた。


『「漆黒のグリフォン…」』


そう俺が言うと金色の瞳が動いて姿を表した。


ーーオマエ知ッテイル…

『「黄泉の門番をしている。

我が名は堕天使ウリエル。」』


ーーソウカ…教エテクレ。我ハ何故ココニ居ル…

『「分からないのか?

お前は人間に召還されたのだろう?」』


ーー人間?…ソウダ…女ヲ連レテ来イト言ワレタ…


『「だがもう必要なくなった。」』


ーーモウ必要ナイダト?

愚カナ人間ドモニ“力”ヲ貸シテヤッタノニ?



音もなく近寄ってくるグリフォンの瞳が怒りを含んでいくのが分かった。


ーーマズいな…



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