とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺の数メートル先でピタリと止まると漆黒の翼を羽ばたかせた。
ーー人間ドモニ“復讐”ヲ…
そう言うとグリフォンは口から黒い息を吐いた。
『「チッ!ダメか!」』
俺は両腕を突き出すとグリフォンを風で包んだ。
風の渦に閉じこめられもがくグリフォンに向かって叫んだ。
『「“復讐”は必要ない!
お前はネメシスの使者だろう!?
その力、主の為に使うべきではないか!?」』
ーー召還サレタ今ノ我ハ愚カナ人間ガ主…
喰イ殺シテヤル!!
『「それはダメだ!
俺はお前をタルタロスに送りたくない!」』
都合よく召還され、その目的も達成出来ず復讐へと駆られたグリフォンは、このままだとタルタロスに送らなければならない。
再び雄叫びを上げると風の渦がぶち破られた。
とっさに床から業火を出しグリフォンを炎の檻に閉じこめた。
グリフォンは俺を睨み瞳を光らせた。
揺らぐ炎と俺の間に歪みが生じた。
…ネメシス!?
呼び寄せたのか!!
ぼぅ…と青白い歪みの中に現れた“女神”と呼ばれるソレは悲しげな瞳を俺に向けた。
『「止めろ、グリフォン!」』
ーー愚カナ人間ドモノ行イハ…神ヘノ冒涜…
止まらないグリフォンの怒りに俺は風を纏って隠していた6枚の羽根を広げた。
グリフォンを閉じ込めていた炎が次第に勢いを増す。
ーー何故ダ!!何故邪魔ヲスル!!
グリフォンの言葉に反応したネメシスが青白い剣を手にした。
俺はそれを睨みながらグリフォンを業火で包んだ。
ネメシスの振り上げられた剣がピタリと止まった。
ドスン!という地響きと共にネメシスが消えた…
それを確認してから俺はグリフォンを包む炎を消した。