とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
1階に戻ると話し声が聞こえた。
その部屋を覗くと黒髪の少女とガクが泣きながら抱きしめ合っていた。
少女はしきりに「ごめんなさい」とガクに謝っていた。
「取り込み中悪いんだが、早めにずらかったほうがいいぜ?
他の連中が目を覚ましたら面倒だ。」
俺がそう言うとガクは涙でぐしゃぐしゃになった顔で振り返った。
「黒崎…ありがとう…
本当にありがとう!」
何度も頭を下げるガクに口角を上げると無言で忍を連れてその場を後にした。
歩きながら忍は俺に腕を絡めた。
「ガクさん良かったね。」
「だな~。危うくガクの妹もグリフォンに喰われるとこだった。」
「ええ!?」
「でも無事だったのは俺のおかげ?」
「ふふ…そうだね。右京のおかげ!」
「…忍。ご褒美は?」
立ち止まって言うと忍は首を傾げた。
「何か欲しい物あるの?」
「あるよ。夕方からずっとお預けくらってんの。」
俺の言葉に真っ赤になった忍の顎に指を添えると「今少しだけ頂戴」と言って腰を屈めた。
忍は「少しだけね」と答えて背伸びをすると、俺にちょっと長めのキスをくれた。
名残惜しそうに離れた忍の唇を指でなぞりながら俺は聞いた。
「続きはいつ?」
「かっ…帰ってから…」
「…俺ここでもいいけど」
「なっ…なにいってんの!?」
腰を捕まえて迫る俺に忍はどんどん後退して路地の壁に背中をぶつけた。
「…ここでヤられると、俺が困るんだが…」
聞こえたガクの声に忍は真っ赤になって俺を突き飛ばした。
ガクの隣にいた黒服の少女は「素敵~!!」と瞳を輝かせた。
「妹のユウカだ。
…ユウカ、うさぎの方が忍ちゃんで、こっちの狼が黒崎だ。」
「…うさぎ…」
「…狼…」
「はじめまして。
助けて頂きましてありがとうございました!」
ペコリと赤い顔で頭を下げたユウカは「邪魔してスミマセン」と付け加えたのだった。