とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「虎太郎が言った通り、黒崎の溺愛ぶりは凄いな…」
ガクは呆れた様に俺を見た。
「黒崎のイメージが音を立てて崩れたわ…」
「なんだそれ…俺は“素直”なの!」
「その顔で素直とか…有り得ない」
前を歩く忍とユウカが楽しそうに会話をしてるようだった。
「ガク、妹大事にしろよ?」
「当たり前だ。」
「sevenも悪い奴ばかりじゃないのも分かる。
でもお前の居るべき所じゃない気がする。」
「…黒崎に言われるとそうかもって思えるな。」
「“お告げ”みてーだろ」
そう言うとガクは「まったくだ」と爆笑した。
「まぁ、あれだ。
俺は毎晩axelにいるから時々来いよ。
今度奢ってやるから。」
「毎晩って常連だな~」
「…何言ってる…あれは俺の店だぜ?」
なるほど、だからsevenのメンバーが多いのか…
「妹も大事だけど、チームの奴らも大事なんだ。
アイツら居場所が欲しいんだよ。
俺はそれを作ってやりたい…」
そう言うガクはメンバーにとっても優しく頼もしい存在なんだと思った。
「だけどあの店評判悪いぜ?
店内で暴れさせるなよ。」
「黒崎が来れば大人しくなる。巡回頼むわ!」
サラリと言い放つガクがおかしくて吹き出した。
「それ俺の役目じゃねーだろ」
バイクのそばに居る忍を見ると手招きしていた。
「俺の役目は違うとこにあるけど、暇な時は巡回してやるよ。」
ヘルメットを忍に被せるとバイクのエンジンをかけた。
「兄貴と仲良くな」
俺はユウカの頭をポンと叩くと「はい!」と元気な返事を聞いて微笑んだ。
「黒崎!困ったらいつでも連絡しろよ。
お前には貸しがあるからな」
俺はフッと笑って家路に着いたのだった。