とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
バイクで玄武師範代の道場に着くと普段は着ない道着に着替えた。
「右京と稽古は久しぶりだな。
クロさんが相手をしたがらないって事は強いんだろうな?」
「体力の問題だけだと思います。
俺まだまだです…」
「どれ、見せて貰おうか」
そう言うと師範代は構えた。
俺も一礼すると斜めに構えた。
師範代は今までのおっとりとした雰囲気とは比べものにならない威圧感を発したかと思うと、重みのある一撃を放って来た。
俺は腕で受け流し、すぐさま反撃に転じた。
だが思うように当たらない…
さすがと言うべきか、受け流され一撃を殺される。
そのまま足を払われ危うく倒されそうになり、体を捻ってリーチの長い足で師範代の腰を挟んだ。
俺は低く唸りながら思いっきり師範代を捻り倒した。
…が師範代は倒れず軽やかに両足を床に着くと俺の足を掴み投げ飛ばした。
予想外の反撃に体がついていかなかった。
息を少し弾ませ立ち上がる俺を見て師範代はニッコリ笑った。
「右京。本能で動け。
お前は予測しすぎる。
…が、さすがだな。」
そう言ってくれた師範代に俺も笑顔で答えた。
それからしばらく師範代に稽古をつけてもらい、気付けば正午をとっくに過ぎていた。