とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
翌日の夕方から以前合コンに参加していた忍の友人が集まり、夕食会の準備を始めていた。
夜は道場が使えないので、午後の稽古で門下生と一緒に軽く汗を流した。
頭にタオルを巻いたまま木刀片手に台所に行くと、丁度忍が冷蔵庫に頭を突っ込んでいた。
「...新しい冷蔵庫の使い方だな...」
「...別に涼んでるワケじゃないんだけど...」
後ろから覆い被さる形で冷蔵庫の扉に手をかけ、クスクス笑う忍の首筋に軽くキスすると麦茶を取り出した。
ふと視線を感じて顔をあげると頬を赤らめて硬直する3人の女性陣がいた。
「...どうした?」
「なっ...なっ何今の!!」
「何が?」
「右京くん、いつも忍にそんななの!?甘々じゃない!!
しかも日本人離れした顔して似合いすぎなのよ!!!」
キョトンとする俺にセリが興奮気味に捲くし立てた。
特にわざとでもなく、いつも通りなのだが...
キャーキャー騒ぎ出した女性陣のその声に師範がすっ飛んできた。
「なんじゃ!また右京か!!
貴様またしても...」
「へ?いや、何もしてない!」
「問答無用!!」
「ちょっ!うわっ!?」
師範に腕を掴まれ背負い投げて居間まで飛ばされた俺は、片手をついて反転した。
切れた師範はまだ何か口走りながら迫って来たので、慌てて逃げると玄関が開き虎太郎達が見えた。
「ナイスタイミング!!」
俺はとっさに虎太郎の後ろに隠れた。
「へ?...ぐはぁ!!」
呆けた顔の虎太郎に師範の跳び蹴りがヒットして、結局二人してその場に倒されたのだった。
それを見た陸と寛二、更に台所から覗いていた女性陣は声を揃えて「壮絶...」と呟いたのが聞こえた。