とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


数日後、忍は水着を買いに行ったらしいが俺がどんなに頼んでも見せてくれなかった。


「右京に見せたらまたウルサいからダメ!」


…だそうだ。


『何故それ程までミズギとやらにこだわるのかが解せぬ』


とウリエルは呟くが、忍だからこだわるのだ!…なんてウリエルに言っても分からないだろう。


そういえば最近は覚醒後も人格が分裂する事なく、力の制御も出来るようになって来た。


「翼があるって事は飛べるんだよな?」

『当たり前だ。今更何を言っている』


昼間は目立ち過ぎるけど、夜なら大丈夫か…


そう思い立って夜中にベランダに出て軽く跳躍して屋根に上がった。


風を纏いながら6枚の羽根を羽ばたかせる。


フワリと感じる浮遊感が懐かしい。

風を操れば羽ばたかなくても自由に飛べる事を体が覚えているようだった。


家の周りを旋回して上昇すると街を見下ろした。
街明かりが凄く綺麗だった。


忍にも見せてやりたいな…


今度見せてあげようなんて考えながらベランダに戻ると、音もなく舞い降りた。



その日珍しく夢を見た。
あまり内容は覚えていないが、どこか賑やかな大都市でナニカを懸命に追っていた。


一体ナニを追っていたんだろう…

ナニカを探してたのだろうか…


ウリエルに聞いても『いずれ分かる』としか言ってくれなかった。
だが、それが何なのか知っているようだった。


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