とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
大量の食料品やら消耗品を買い込んで、帰宅した頃にはすでに太陽が傾いていた。
「右京ありがとーね!助かったよ~」
「あんな大量だなんて聞いてねーよ…」
ダイニングのイスに座ってわざとらしく肩を回すと忍が肩を揉んでくれた。
「ご苦労様~」
そのまま上を向くと真上に忍の笑顔が見えた。
「…ご褒美は?」
「…何が欲しいの?」
「決まってんだろ?」
俺は腕を伸ばして忍の頭を手で引き寄せた。
唇が触れ合う瞬間、忍が小さく「バカ」言うのが聞こえた。
「ごちそうさま♪」
そう言って俺は師範に見つかる前に退散した。
夜稽古の後、携帯にメールが来ていたのに気付いた。
寛二から今日のお礼と、来週の月曜に一泊で海に行くからと言う内容だった。
月曜って10日か…意外と夏休みって短い。
はやく進路決めないとなぁ…
そんな事を考えていたらなんだか眠たくなって来た。
そしたらまた夢を見た。
今度はちゃんと覚えていたが、色々な場面がスライドのように切り替わっていった。
赤い瞳の女…
6枚の白い羽根…
グリーンとゴールドのオッドアイ…
路地裏に広がる赤黒い…血溜まり?
そこで目が覚めた。
異常なまでに早い心拍数でうなされていた事に気付いた。
俺は確かに何かを追っていた。
本能的にわかる。
これは…
…“予知夢”だ!
汗の滲む体が気持ち悪くてシャワーを浴びた。
なんだかひどく孤独感を感じ、心細くなった。
忍の部屋をノックするとしばらくして「はい」と声がしてホッとした。