とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



21時を過ぎると花火が止まった。

「もう終わりかぁ~

もっと見たかったなぁ…」

「また今度な?」


残念そうな顔の忍にそう言うとニコッと笑った。


そういえば、今日は祭りのせいで店混んでるかもな…
酔っ払いが暴れたりしないといいんだが…

そう考えたら心配になって来た。
その様子を見て忍は微笑んだ。


「axel行ってみる?

気になるんでしょ?」


忍は俺の心を読んだみたいにそう言った。

ちょっと驚いた顔の俺に「お土産買って行こ!」と手を引っ張って歩きだした。


俺、そんなに顔に出てるのかなぁ…




近くの屋台で焼きそばとお好み焼きを買うと、店に向かって歩きだした。

凄い人混みで店に入るのも一苦労だった。

店内はやはりいつも以上に混み合っていた。

忍を庇いながらカウンターまで歩く。
やっとの思いでカウンター内にいたゴウの前までたどり着いた。


「はぁ…すげーな…」

「お!黒崎!いいとこに来た!

ちょっとドリンク作れや」

「えー!?」

「いらっしゃい、忍ちゃん!

ちょっと黒崎借りるな?」


俺は仕方なく忍はカウンターに座らせると、浴衣のままカウンター内に入ろうとして忍に引き止められた。


「右京。ちょっと来て。」

「ん?」

「その袖じゃ動き辛いでしょ?」


忍はバックから紐を取り出した。


「こんな事もあろうかと思って持って来たのよ。」


それで忍は俺の浴衣に襷掛けをしてくれた。


「なるほど!ありがとな」


俺はカウンターを飛び越えて内側に入ると、シェイカーを手に取った。

忍はその様子を肘を着いてじっと見ていた。



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