とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
忍に視線を戻すとテーブルにカクテルを置いたところを男に手を掴まれていた。
「忍!!」
俺がカウンターを出ようとした時、忍の真後ろの空間が歪んだ。
「!?」
あれは…
その歪みから長い束ねられた黒髪の男が現れた。
黒髪の男は忍を掴んだ手を引き剥がすと、忍に何か言って背中を軽く押したのが見えた。
忍は黒髪の男を気にしながらこっちに戻って来た。
黒髪の男はテーブルのヤツに頭を下げ、優雅に振り向きこちらを見た。
!!…フォカロル!?
目が合うとフォカロルは可愛くニコッと笑った。
俺はフォカロルを顎を動かして“来い”と合図した。
「う…右京…あの人なんだろう…」
「大丈夫。俺の知り合いだ。」
「右京の?」
不思議がる忍の後ろから人間に化けたフォカロルが「お呼びですか?」と俺に微笑んだ。
「お前突然現れるなよ!」
「忍様が危険を感じたようでしたので…」
「なるほど。
まぁいい。
ほら、これを持ってけ」
そう言ってフォカロルにソルティ・ドッグを2つ渡した。
「3番テーブル」
「かしこまりました。」
上品にお辞儀をし、言われた通りにカクテルを運ぶフォカロルの後ろ姿を見て俺はこっそり微笑んだ。