とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~


駅前は人だかりが出来ていた為、どこにゴウが居るかすぐに分かった。


野次馬を掻き分けて前に進む。
座り込み腕を押さえているゴウに近づいた。

俺に気付いたゴウはつらそうな表情で「大丈夫だ」と言った。


「腕か…見せてみろ。」


確かにかすっただけの傷に見えた。


だが回りがアザのように黒くなっている。


「…大した事ない…」

「…壊痕だ。」

「えそ?…なんだそれ…」

「腐り出してるって事だ。」


俺はそばにいたヤツに「救急車を」と伝えて、ゴウに向き直った。


「…どっから撃たれたかわかるか?」

「あっちの上からだと思う。」


建設中のビルを指差すゴウに「分かった」と告げて携帯を取り出すと虎太郎に電話をかけた。


「ロレイだ。駅前に現れた。」

『くそ…っ!誰かやられたのか?』

「ゴウが撃たれた。かすり傷だが、壊痕傷だ。」

『なるほど。』

「建設中のビルから撃って来たらしい。

先に行くから早く来いよ」


そう言うと電話を切ってゴウを見た。


「黒崎…?お前…」

「…自分の心配してろ。

仕返しに行ってくる。」


俺がそう言うとゴウが驚いた。


「お前が“仕返し”だって?

…似合わないな…


…それより…お前の目…変だぞ?」

「…特異体質なんだ…問題ない。」



俺は立ち上がるとビルに向かった。



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