とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
しばらくその殴り合いを見ていたが、一向に収まる気配がない。
「虎太郎。アイツら止めれるか?
…5分だ。
」
「…俺、あんまそういうの得意じゃないんだけど…」
そういいながら立ち上がると、壁に立てかけてあったモップを掴み、柄の部分だけを取り外した。
それを肩に担いでシャツを第二ボタンまで外した。
抗争の中をゆっくり進むと、敵だか味方だかわからない男達が次々と殴りかかって来るのが見えた。
虎太郎は無駄のない動きで避けながら柄を振り、ひとり…またひとりとなぎ倒していった。
「…あれが苦手なヤツの動きか…?」
「右京様。
ワタクシも加戦しましょうか?」
「ん~お前はいいや…」
コイツにやらせたら死人が出そうだし…
そんな中、目の前ひとり飛びかかって来るのが見えた。
俺は動かずにニヤリと笑った。
次の瞬間、そいつは潤によって弾き飛ばされた。
「“加戦”はするな。」
「わかっております。」
可愛い顔の悪魔はにっこり笑って応えた。
だいぶ戦意が減った頃、俺が立ち上がるとチーマー達はそれに気付き緊張した表情になった。
「タイムリミットだ」
俺は掴み合う昴とガクに近づくと昴の腕を捻り上げた。
ガクは息を吐きながら俺を見上げた。
「邪気が酷すぎる。
もういいだろ?終了だ。」
俺がそう言うとガクは座り込んだ。