とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



そんなある日の昼休み。昼食を終えた俺は校舎の屋上でぼんやり空を見上げていた。

虎太郎も俺の隣であぐらを組んで伸びをしていた。


「平和だねぇ~。」

「だなぁ~...こういう日常って俺好きだな」


そんな会話をしていると虎太郎は急に真剣な顔になった。


「右京...進路決めたんだろ?」

「あぁ。決めたよ。」

「忍さんに言ってないんじゃないか?」

「...忍には...まだ言わない。」

「...そっか...みんなにも言ってないしな~...」

「ん。...正直に言うとさ、言わないで行こうかとも考えたんだ。」


俺の言葉に虎太郎は何も言わなかった。

逆にそれが“賛成も反対もしない”と言っている様に思えた。


「まずどこの国に渡るんだ?」


「イギリスに忍の両親がいるんだ。

向こうの大学は全寮制に進むとして、やっぱ身元引受人が必要みたいだからとりあえずイギリスに行く。」

「イギリスね。あそこには精霊がたくさんいるって聞いたことあるぜ。」

わざと明るく言う虎太郎に笑った。


「そりゃ楽しみだな。精霊には会ったことないんだ。」


お返しに俺も明るく言ってみた。


「向こうに行ったら探しに行こう!」

「ああ...そうだな」


ネガティブになってても何も解決しない。

虎太郎を見習ってもっと前向きにならねぇとな。


俺は勢いよく起き上がると、「戻るぞ」と言って屋上を後にした。




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