とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
唇を割って口内に侵入した舌が忍の舌を捕らえて放さない。
乱れた忍の吐息にゾクッとした。
「だっ…だめ!
…これ以上…だめ…」
「…なんで?」
「遅刻…しちゃうし…」
困った表情の忍を見つめた。
俺はちょっとふてくされて「分かったよ」と言うと体を起こした。
腕を引いて忍も起こしてやると俺は着替えを始めた。
「右京。」
「あ?」
「…背中に傷が…」
忍はそれに手を伸ばして触れた。
サルガタナスに切られたやつか…
「もう塞がってるだろ?」
「こんな大きな傷…」
「大丈夫だって。
…そんな顔してると襲うぞ」
そう言って笑うと、忍は背中から俺を抱きしめた。
「あんま無茶しないで…」
「ん。分かってる。
油断しただけだから…」
忍は俺に傷が増える度、いつも決まってこんな顔をする。
きっと俺が思ってる以上に心配してんだな…
「忍?…俺はそう簡単にやられないから。」
「ホント?」
「ん。約束する。」
やっと笑った忍にホッとした。
「よし!朝稽古行くから朝食よろしくな~」
明るく言うと「いってらっしゃい」と背中を押してくれた。