とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
夜、忍の部屋を訪れると珍しく机に向かっている忍が居た。
「レポートが終わらなくて…」
「まだかかるのか?」
「今週いっぱいが提出期限なの。」
そう言ってまたカリカリとペンを走らせる忍を覗き込んでみたが、軽く睨まれた。
俺は仕方なく忍のベットに胡座をかいてしばらく待つ事にした。
視線を感じて集中出来なかったのか、忍は溜め息を付くと俺の方に顔を向けた。
「分かったわよ…
話したい事があるんでしょ?」
「ん。今週末忍とデートしたい。」
「今週末?何かあるの?」
「忍誕生日だから、プレゼント選びに行く。」
忍はキョトンとして「忘れてた」と笑いながら俺の隣に座った。
「別にいらないわよ…」
「俺があげたいの!」
「フフ…分かった。週末ね?」
ちょっと腰を浮かせて俺に触れるだけのキスをすると、「ありがと」と言ってまた机に向かった。
「デート出来るようにレポート終わらしちゃうね」
「ん。開けとけよ?」
忍がニッコリ微笑んだのを見て部屋を出た。
下の部屋に降りると師範がテレビを見ながらビールを飲んでいた。
「右京、一杯付き合わをか?」
「俺未成年なんだけど…」
「まぁいいから座れ。」
俺は師範の前に座るとグラスに注がれるビールを眺めた。
「お前とこうして飲むのがワシの夢じゃった。」
「夢ちっちぇーな。」
俺が注がれたビールを一口飲むと、師範も嬉しそうにグイグイ飲んだ。
「ワシの夢は一つじゃない」
「他には何があるんだ?」
「道場を右京に継がせる事じゃろ~
あとお前のバイクを乗り回す事じゃろ~」
「バイクなんていつでも乗せてやるよ。」
俺はそう言って師範のグラスにビールを注いだ。