とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



夜、忍の部屋を訪れると珍しく机に向かっている忍が居た。


「レポートが終わらなくて…」

「まだかかるのか?」

「今週いっぱいが提出期限なの。」


そう言ってまたカリカリとペンを走らせる忍を覗き込んでみたが、軽く睨まれた。

俺は仕方なく忍のベットに胡座をかいてしばらく待つ事にした。

視線を感じて集中出来なかったのか、忍は溜め息を付くと俺の方に顔を向けた。


「分かったわよ…

話したい事があるんでしょ?」

「ん。今週末忍とデートしたい。」

「今週末?何かあるの?」

「忍誕生日だから、プレゼント選びに行く。」


忍はキョトンとして「忘れてた」と笑いながら俺の隣に座った。


「別にいらないわよ…」

「俺があげたいの!」

「フフ…分かった。週末ね?」


ちょっと腰を浮かせて俺に触れるだけのキスをすると、「ありがと」と言ってまた机に向かった。


「デート出来るようにレポート終わらしちゃうね」

「ん。開けとけよ?」


忍がニッコリ微笑んだのを見て部屋を出た。



下の部屋に降りると師範がテレビを見ながらビールを飲んでいた。


「右京、一杯付き合わをか?」

「俺未成年なんだけど…」

「まぁいいから座れ。」

俺は師範の前に座るとグラスに注がれるビールを眺めた。

「お前とこうして飲むのがワシの夢じゃった。」

「夢ちっちぇーな。」

俺が注がれたビールを一口飲むと、師範も嬉しそうにグイグイ飲んだ。


「ワシの夢は一つじゃない」

「他には何があるんだ?」

「道場を右京に継がせる事じゃろ~

あとお前のバイクを乗り回す事じゃろ~」

「バイクなんていつでも乗せてやるよ。」


俺はそう言って師範のグラスにビールを注いだ。


< 237 / 405 >

この作品をシェア

pagetop