とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
とりあえず喧嘩を仲裁し、カウンターに戻るとジンヤが近寄って来た。
「最近黒崎さんの暴れっぷりが見れなくてつまんないっすよ…」
「平和でいいじゃないか。」
「そーなんすけどね~。
あ、黒崎さん“ご指名”っすよ?」
“ご指名”と言う言葉にウンザリする俺はカウンターに座る女を見た。
「またお前か…」
「あら、覚えてくれたんの?」
「しつこすぎる。
嫌でも覚えるよ…」
そう言う俺を見て女は笑った。
「この前、右京君の彼女見たわ~
…凄い綺麗な人ね~
あれじゃ私勝てないわ…」
「勝ち負けじゃねーだろ。
でも…彼女以上の女はいない。」
俺はそう言うと思わず微笑んだ。
「おっと!ヤべ…
…お前…今の見た?」
「…み…見たわ…」
ぽぉ~となりだした女に俺は真顔に戻って言った。
「彼女の話なんてするからだ!
今のは見なかった事にしといてくれ…」
「…わかったわ。
噂通りあなたの笑顔はヤバいわ。
私からも他人に見せないよう、忠告するわ。」
俺は「どーも」と短く返事をしてカクテルを女の前に置いた。
「右京君って不思議な人ね。
イケメンなのに男ばっかり寄ってくるじゃない。」
「俺、男にモテるから。」
「女にもモテるわよ?
少し自覚したら?」
「男が回りにいるから女が近寄って来ないんすよ!」
脇からジンヤが口を挟んだ。
確かにそうかもな…
「黒崎さん、ゴウさんが呼んでます。」
奥のテーブルを見る手招きされた。
「…気が乗らねー…見ろよあの顔。
絶対なんか企んでる…」
「でしょうね…
黒崎さん休憩しちゃっていいっすよ?」
ジンヤにそう言われ、俺は頷くと女に「わりぃな」と断ってカウンターを出た。