とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「分かった。
じゃあ忍。俺の事好き?」
「なっ…なんなの!?」
「ほら、言えって。」
俺は足を止めて忍を見つめた。
忍は赤くなりながら焦り出した。
「ここで言えって言うの!?」
「ん。今すぐに!」
「きっ…嫌いならデートなんてしないわよ…」
「ほら…素直じゃない。
忍は大事な事をはっきり言わないんだよ。」
俺がそう言うと忍は少し俯いて黙った。
忍の頬を撫でながら顎を掴んで少し上を向かせると、俺は瞳を潤ませる忍を見つめた。
「俺は忍が好きだよ…誰よりも。」
そう言って少し身を屈めてキスをすると忍は「恥ずかしい」と呟いた。
「俺みたいなのを“素直”って言うの!
分かった?」
「…分かった…」
「忍が素直なのは寝てる時だけだな…」
思わずポロッと零した一言に忍が眉を寄せた。
ヤバいと思った時はすでに遅し…
「…どういう意味?」
「えっ!?…な…何が?」
「寝てる時だけって…
まさか寝言聞いたの!?」
俺は曖昧に微笑んで誤魔化すとスタスタ歩き始めた。
映画館まで忍はしつこく俺を問い詰めたが、俺は隠し通した。
俺の唯一の楽しみ…奪われてたまるかよ!
映画が始まるまで忍は食い下がっていたが、終わる頃にはもう諦めた様だった。