とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
店につくとウエイター姿の寛二を発見して手を振った。
「え?!寛二くん?」
「そ。クミがここでバイトしてるだろ?」
「ここだったんだ...」
「合コン計画したのってクミだったって聞いてるぜ?」
「確かにちょっと遠いけど制服が可愛いからって言ってた。」
「あ~あのメイド服みたいなやつね。」
そんな会話をしていると寛二が「いらっしゃいませ」とニヤニヤしながら寄って来た。
「キモイ。客に向かってニヤ付くなよ。」
「ふ...まさかここに来るとは...いらっしゃい、忍ちゃん」
「こんにちは!寛二くん、ここでバイトしてたんだ!」
「え?知らないで来たの?クミもいるよ。」
「“どこの女と来たのよ”って言われた。」
「いっ・・・言ってない!!」
寛二は肩を揺らせて笑いながら席に案内してくれた。
「忍ちゃん、右京に限って他の女とデートはないから!」
「一瞬でも疑われて俺ショック...」
「だって...」
「決まったら呼んで。クミに来させるから。」
メニューを渡された忍はいつものごとくまた悩み始めた。
「今度はどれとどれで迷ってるの?」
「カルボナーラと...アラヴィアータ...」
「ペンネだろ?それ旨いぜ」
俺は呼び鈴を押すとクミがニヤニヤしながらやって来た。
「客に向かってニヤ付くな。一々反応が寛二と一緒でむかつく...」
「まさか忍と一緒に来るなんて!ちょっと嬉しいかも。」
「クミかわいい!制服似合ってる!」
「ふふっ...ありがと♪」
オーダーを終えるとクミは小声で話し始めた。
「裏でさっき他のウエイトレスが右京くんの噂してた。」
「俺の?」
「ん。女連れだ!って...いつも虎太郎君と来るから彼女いないと思ってたんじゃない?」
「うわ...彼女こんなでスミマセンって感じじゃない...」
「何言ってんの!
彼女かわいいって話してたわよ?見せ付けて帰りなさい!」
そう忍に言ってクミはメニューを下げて厨房に戻っていった。