とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
クミは注文したパスタをテーブルに置くと、半ば飽きれたように俺を見た。
「右京くん。場所をわきまえなさい。」
「クミも空気読めよ。これから忍を口説くところなんだから。」
「口説くって...あんた達付き合ってるんでしょ?」
「そんなの関係ない。常に俺は忍を口説きたいの。」
「ちょっと忍!あんたの彼氏なんとかしなさいよ!!」
「...もう慣れたよ...」
忍が苦笑いしてそう言ってもクミは納得いかなそうに続けた。
「あのね~、ここは日本なの!少し節度を持ちなさいよ!」
「大丈夫、俺日本人離れした顔してるから。」
「そういう問題じゃないでしょ!?」
俺のしれっとした態度にクミがヒートアップして声を張り上げた。
それに気付いた寛二が慌ててやってきた。
「クミ!抑えて!!右京バカだから言ってもしょうがないだろ?」
それまで黙っていた忍が「右京」と珍しく声色を変えた。
「うるさい。恥ずかしいからちょっと静かにしなさい!」
「…はい…」
あまりの迫力に頷く俺。
その様子を見た寛二とクミは顔を見合わせた。
「右京が完全に尻に敷かれてる...」
「忍...意外と怖いのね...」
忍は涼しい顔をして「いつもの事だから」と言うと、妙に納得して戻っていった。