とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
その後寛二とクミと別れると、帰り道に発見した公園でのんびり過ごした。
芝生に寝転がって空を見ながら他愛もない話をして、じゃれ合って...
「…忍…」
俺は仰向けに寝転んで空を見たまま、横に座る忍に話しかけた。
「忍の夢って何?」
「夢?…漠然としててうまく言えないわ…」
「そっか。
この前さ…師範の夢を聞いたんだ。」
「おじいちゃんの?」
「じじぃのクセに笑っちゃうくらい夢がいっぱいあるんだ。」
俺は思い出して笑いながら話した。
「師範の一番の夢って何だかわかる?」
「うーん…道場を右京に継いで貰う事?」
「その夢もあった。
一番じゃないけど…」
忍は「欲張りね」と笑った。
「師範の一番の夢は…
“俺と忍の子供を抱く事”
…なんだって。」
「右京と…私の?」
忍は驚いて言葉を詰まらせた。
「俺もびっくりした。
でも…その夢…俺もいつか叶えたい…」
首だけ動かして忍を見ると少し潤んだ目で微笑んでくれた。
「…かわいいだろうな…
俺も抱きたい…俺と忍の子供…」
「…ばか…」
忍は屈んで俺にキスをした。
頬に忍の涙が落ちたのが分かった。
「…叶ったら素敵ね…」
そう言って微笑む忍が綺麗だった。
俺も微笑んで忍の涙を指で拭いた。
「泣くなよ…
泣かせたい訳じゃないんだ…」
それでも忍はしばらく泣き止まなかった。
本当は卒業後に留学する事を言うつもりだったのに、忍の綺麗な涙を見たら言えなくなった。
俺はただ忍を抱きしめる事しか出来なかった。