とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
静かに一筋の涙を流す忍の横顔は綺麗だった。
「また泣く~
忍は泣き虫だなぁ~」
俺は忍の涙を唇でなぞって瞼にキスをした。
「右京…寂しいよ右京…」
俺は優しく微笑んで忍を背中から抱き締めると首筋に顔をうずめた。
「大好きだよ、忍…
泣かないで…心配で決心が揺らぐ…」
「ごめん…今だけだから…」
ポロポロと泣き続ける忍に俺は「忍!」と明るく声をかけた。
「手出して。」
忍が胸の前で両手を出すと俺はその手に自分の手を重ねて、ちょっと浮かすとその隙間から光が溢れ出した。
「うわぁ…綺麗…」
光は忍の手からまるで砂のようにサラサラとこぼれた。
その光の砂を俺は小さな旋風を起こして巻き上げた。
忍の真上で風は消え、光の砂が忍と俺に降り注いだ。
「わぁぁ!!すごい!!」
泣き止んだ忍は俺を振り返って笑った。
「こんなので笑ってくれるなら、いつでもしてやるよ。」
俺は優しく風で忍を包みながら微笑んだ。