とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
丁度クラスメートの大半が帰った後、真っ直ぐカウンターに歩いて来る女が目に入った。
「あら、右京君。今日はお客?」
「そんなかんじ。指名出来ねーぞ。」
「じゃあ一緒に飲まない?」
「飲まない。」
「…つれないわねぇ…
右京君、マルガリータ頂戴」
「ノンアルコールにしとけって。」
俺はカウンターに入ると手際よくカクテルを作った。
「元気ねーな。」
「…わかる?…失恋しちゃったわ…」
「あんたなら幾らでも相手が居るだろ?」
「…他の人じゃ意味ないじゃない…
ねぇ…右京君わたしを慰めてくれない?」
女は俺の腕に触れたが俺は半眼で見つめ返した。
「…冗談よ…
あ~ムカつくわ!」
「俺がお相手しましょうか?」
ジンヤがニヤリと笑いながら来ると女は微笑んだ。
「ジンヤ君なら私を慰めてくれる?」
「いつでも♪」
ジンヤの言葉に女は「ありがとう」と笑った。
女がフラリと立ち、フロアの人混みに紛れるとクラスメートの高田が俺に言った。
「あの女…どっかで見たことある。」
「そうなのか?
axelの常連だよ。」
「綺麗な人だな。」
「興味ない。」
素っ気ない俺の態度に高田は笑った。